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2014年08月03日(日)

建築家が建てた母と娘の幸せな家

「建築家が建てた母と娘の幸せな家」という本が出ました。5,6年まえから雑誌「ミセス」で連載していたものを単行本にしたものです。文章は田中元子さん。これまでも彼女のことはコラムでも書きましたが、実に素敵な女性。そして文章が抜群。というより書く内容が、唸らせます。文章の技術もさることながら、着眼がよく内容の掘り下げが、短い中で見事なのです。此の本は、建築家の自邸を訪ね、奥様か娘さんに会って話をする、その記録なのです。たぶん2時間くらいでしょうが、その中から自分が組み立てようとする内容のエッセンスのみを抜き出して、短い文章にまとめています。建築家は出てきません。大げさに言うと、これを読んでいると、住宅を作っていた姿勢まで揺さぶられるような感じがします。つまりおさまりとかディテールとかプロポーションとか空間とか形態とか、勿論これらが必要なことは承知の上で、ここでは、その生活の仕方や家族関係や生き方や、それらのオンパレードに「住宅ってなに?」とあらためて考えさせられるのです。読んでいると、田中元子さんの文章つまり彼女の見方であるのに、ふと、住人や建築家や、この家自体が語っているような錯覚を覚えます。で、それは住宅の内面の最も大切な部分に迫っているように思えます。白い壁に窓をどう開けようかとか、窓はカッコ悪いから壁だけにしておこうとか、奇抜な形態で雑誌に売り込もうとしている住宅作家は、一度立ち止まって読んでみることを薦めます。


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