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2015年11月11日(水)

やっぱり

電話がかかってきて「貴方の設計した白い傾斜地の家がとても気に入ったので、設計して欲しい」と言います。不動産屋らしく、賃貸にしたいらしいのです。しかし「賃貸で何棟かを建てたが、もうそろそろ私も齢だから、自分の財産としても所有していたいから作品を作りたいのだ」、と言います。建築家でこの言葉に喜ばないひとはいません。早速川越まで行きました。訪ねた部屋は自宅の応接室で、見回すと、趣味は違いますが「古伊万里」とか「李朝の壺」とか、お宝が沢山飾ってあります。

私はやっと、最近開き直って、最初から契約の話を持ち出すことにしました。これまでは、その話を出した途端に何度もUターンされたので、(宮脇檀さんも10人に9人帰られると言っていました)設計料の話すらタブーで、十分進めてから契約していましたが、「もう時代は変わった。はじめから契約だ」と心に決めていたので、思い切って切り出すと、「ええ、案を拝見したらすぐ契約します」と当然のように言い、設計料を幾らにするとか、まったく無関心そうでした。予定工事費は3億5千万です。慣れているなと思い安心しました。だからやっぱりそれ以上は踏み込まず、「私は若い人とネットワークを組んでいて、その信頼できるパートナーと次回は一緒に来ます」と言って帰りました。

それで信頼できる「パートナー」の一人G君に話をし、一緒にやってくれと依頼。「開発」が引っかかるところで、それを避けるためあの手この手を考え、役所にも行ってもらって調査しました。1案を作って模型も作って、G君と持って行きました。気に入ったようでした。ただ、賃貸の採算計算を息子にもさせるから時間が欲しい、と言います。

G君に契約書と請求書を用意してきてくれと言ってあったので、合図をすると、彼はまだ未記入の書類を出して、記入しておいてくださいと言いました。こちらの名前は書いてありますが、印も押してありません。記入して返信してもらう封筒も用意されていません。「なにをおっとりしているんだ!」と思いましたが、私もこれまでどうせこんなことで一生を送ってきたのだから、「それで良いんだ」と気を静めて帰りました。

その後連絡が無いので連絡すると、携帯は切られていて、メールも戻ってきます。おかしいなと思って、自宅(会社)に電話すると「体調を悪くして入院しています」と女性の声。

それから数日後、再び連絡をとると、携帯もメールも不可。自宅に電話して伝言を頼むと、数分してかかってきました。「体力に自信が無くなったので今回は止めます。いろいろ有難うございましたと言っております」。一巻の終わりです。(続きは次回)


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