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2016年03月12日(土)

高橋ていいち先生ご逝去

高橋ていいち先生(私のPCに漢字が無いので)がお亡くなりになりました。大変洒脱といいましょうか、表現が思いつきませんが、尊敬する好きな建築家でした。

パーティー会場で輪が出来て囲まれているので、建築の話かと近寄って見ると、映画「ゴッドファーザー」の話でした。ギャングたちの会議が丸テーブルを囲んで行われた。それを真上から映しているんだ、と幾何学的な抽象画のような光景を説明される。その凄いシーンを見たくて映画を実際に見に行きましたが、先生が話されるシーンの方が素晴らしかったのを思い出します。とてもお話のうまい方でした。

うちの大学でパーティーがあった時、私が司会でした。先生のお話がお上手なのを知っていたので、先生をご指名してスピーチをお願いすると「高橋でございます、こんばんは」だけで終わられました。人がしゃべっているところでなど話は出来ないよ、という皮肉と私へのお叱りでした。以来、酒を飲んでしゃべっているパーティ会場で、スピーチを指名するのは失礼と心得るようになりました。

先生に私の設計の授業の非常勤講師をお願いした時、規則で経歴書を書いていただきました。すると、出てきた「経歴書」をみてびっくりしました。「1924年青島生まれ、1949年東京大学卒」だけしか書いてありません。普通は大した経歴でもないのに、なんとか立派そうに欄一杯に書こうとするが人情ですが、先生は、その自分を誇張して見せる姿を軽蔑しておられたのでしょう。「形式・普通・権力」がお嫌いなようでした。おかげで教務課から私が叱られました。

私の設計の課題で、大学の「五十周年記念館」の設計を出しました。私が課題説明をして、「大学の建学の精神はよく調べて読んで理解して設計すること」と言うと、学生の後ろに座って聞いておられた先生が「ハーイ」と手を挙げて「建学の精神は形になるんですか?」と質問なさいます。私は慌てて、とっさに「先生は大学の設計の依頼があったら、建学の精神も読まずに設計なさるんですか?」と返しました。「おぬし、言うじゃあないか!?」という顔をされてニターと笑われました。

同じ笑い顔でも最高にいたずらっぽいのが、授業がまだ終わってないのに、学生に分からないように私にいたずらっぽい笑い顔で、何かのサインを送られるのです。私も軽くうなずいてサインを返します。そっと席を立たれます。新幹線の最終間に合う時間だったのです。

実は、私が「浪速芸大」のコンペに落ちて「第一工房」が入選されて、以来、先生には建築に真摯に取り組む姿勢を多多教えられたことの方が、そういう冗談よりはるかに大きいものでした。心からご冥福をお祈りいたします。    


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