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2016年05月17日(火)

情熱

工務店をやっているY君に久しぶりに電話をかけて、仕事拡張の話があるが乗らないか?と誘いました。

Y君は私の研究室の初期のOBで、父親の工務店を継いで社長になったのですが、バブルの不況を受けて倒産しそうになりました。しかし彼の人徳で、関連業者に助けられて立ち直りましたが、「新築をやる施工はもうやらない」と宣言しリフォームだけにしてしまいました。  その頃私は、倒産してもう工務店なんかやらないという人を他にも2人知っていて、いかに厳しい仕事か理解できたので寂しい話ですが、やむを得ないと思っていました。

Y君は卒業してすぐ、独特のカラーを持つ或る若手スター建築家のところに修行に出ました。やがては施工者となることは予定していたのでしょうが、設計も施工も区別なく建築に燃えていました。その建築家もそういうところがあって、「近代的」な設計施工の分離システムなど彼には関係なく、Y君はその情熱だけは叩き込まれたようです。

「二点を結ぶのに直線は誰がやっても同じだ、ちょっと曲げると無数になるだろう。そこに個性が出るから面白いんだ」というのが、最初に教わったことらしく、直線を重んじる私に得意顔で話しに来たこともありました。「建築の面白さ」は体得しました。

彼には3軒建ててもらいました。その他改修もありました。客や業者との人間関係は安心して見ていられるキャラクターの持ち主でした。

設計関係では、もともと設計に進んだことが勘違いだったという(例の拙著53P)、そして今頃気付いてどうする、という寂しい御仁は沢山知っていますが、Y君は情熱があれば鬼に金棒と思っていましたが、結果は、断られました。「もう拡張もしたくありません」と。


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