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2016年05月18日(水)

コルビュジェ「世界文化遺産」

コルビュジェの「西洋美術館」が世界文化遺産に登録されそうで、世間は喜んでいます。実は私、反対なのです。

 高校生の時、コルが設計するために日本に来て、それが「文芸春秋」のグラビアに掲載されて「建築家ってなんとカッコウの良い仕事なんだろう」とあこがれて、建築学科を受験しました。私の建築家へのスタートです。

2年生の時、美術館は完成しました。ちょうど「計画Ⅰ」の授業で「美術館建築」を習っていましたが、この美術館はその基本がことごとく破られていて、東大の教授が「遊戯施設にでもしてしまえ!」と批判文を雑誌に書きました。しかし私はそんな機能的なことより、この「空間」のなんと素晴らしいことかと感動していました。話が長くなるので省略しますが、とにかく建築空間、建築造形は、器としての機能性には欠陥があるかもしれませんが、展示されているロダンの彫刻や泰西名画と肩を並べる傑作だと思いました。

今回「世界文化遺産」としては幾つかひっかかることがあると言われています。読んでみると、この建築の特徴のひとつは、渦巻き状の平面で増築を考慮した「無限発展」だが、現実の増築は単に別棟を建ててしまった。それから「屋上庭園」がコルビュジェの強い提案なのに屋上を使用させていない、等々、いくつか建築家の意図通りには使用していない、というのです。

建築家と一般のひととの間には、現実の住み方や使い方と大きくズレている、ということは、コルビュジェの例を見るまでもなく、よくあることです。否むしろ彼が手本のようなものかもしれない。

だから、そんなことに引っかかっていないで、「建築なんて、傑作ほど使いづらい、住みにくい、理論と現実離れ離れ。でもなかなか素晴らしい。」と主張していればいいじゃあないですか。

良い建築というものは芸術なのですよ。芸術に「機能」なんて求めますか? だから、「世界芸術遺産」をつくって、それを贈るべきと思います。それなら賛成です。


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