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2017年01月12日(木)

総理大臣の名刺

思い出話で恐縮ですが。

天皇陛下の退位のことで「有識者会議」ができましたが、そこの座長が今井敬という経団連の名誉会長(?)という方のようですが、実はこの方、昔お会いしたことがあるのです。

古い話になりますが、「成田新空港」ができる時、うちは事務所を作ったばかりでした。なんとか仕事を取ろう、ということで、成田空港をやろうと決めました。しかしどうしていいか分からない。これはトップに頼むしかないと思い、中学高校で友人だった福田総理大臣の息子に、オヤジに頼んでくれと云って、空港公団総裁に会うための名刺を書いてもらいました。ちょうど友人のオヤジはその時総理大臣だったのです。名刺は「福田赳夫」としか書いてないシンプルそのもの。肩書も住所もない。そこに当時総裁だったその今井敬氏宛ての、「吉田研介さんをよろしく」とだけ書いてありました。

ところが宛名が「今井仁兄」となっています。恥ずかしながらその時、「仁兄」などという敬称は使ったことが無いので知らなかった。「兄」だけは知っていたので、今井総裁は敬という名前で、仁ではないのに、きっと福田総理が間違えたのだと思って、友人に電話して「直してくれよ」というと「バカだなあ!」と言われて、納得し安心して持って会いに行きました。

その名刺の力は凄いもので、一気にフリーパスで秘書たちに囲まれながら総裁室に通されました。そして今井敬さんに合わせてくれました。「空港の設計をやらせてください」と言うと、分かりました、担当のものを紹介します、と言って丁重に受けてくれました。凄いですよ、総理大臣の「名刺の力」は。

それで担当者が現れて、引き渡されて、数日中にご連絡しますと丁重に帰されました。数日後に、申請を引き受けたという書類がきて、うちの事務所の「等級」の欄に「格別の等級無し」と書いてありました。たぶん「梓」とか「日建」が1級で、五段階あってその下ということらしいのです。

ところがその時、幸か不幸か「成田闘争」が勃発して、全てが止まりました。

その後数年して「ロッキード事件」が起こります。TVを見ていてびっくりしたのは、大臣の名刺がたしか100万円、総理となるとその何倍からしいのです。

私はそのとき、精一杯のお礼、しかも超高級な送りもの「カニ缶6個」をお礼に送ったのを憶えています。


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