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2018年12月20日(木)

仕事の思い出ー4

 昔、コンクリートの大きな家を設計しました。工務店の社長の自宅です。施工は自分の工務店を使うように言われましたが、調べてみると、地元の公共建築が主で、学校や幼稚園、そのほかは大型の商業施設で、住宅の経験がありません。

 「住宅はデリケートだし、大工も経験が無いと無理です」と言いましたが、社長の家を他社にやらすわけにはいかない、と聞く耳を持ちません。

 工事が始まりましたが、案の定、粗いこと、荒いこと。私はミリ単位でこだわりますが、2,3センチの狂いはヘイチャラです。ミスもそのまま。

 うちの若いスタッフは途中から、行くのがイヤだというくらい職人が言う事を聞かずいじめられました。

 それでも何とか竣工して、引き渡して1週間後、一部屋だけ作った和室の天井に、寝てよく見ると足跡があると怒っています。工事中職人が踏んだんでしょう。

「この和室は建売のようにひどいですね。半分持ちますから、あとの半分は貴方の責任で、この和室だけ作り直してください」

―――初めに言ったでしょ、こんなひどい工事は工務店の問題です、と言おうとしましたが、

「では、今度は私が推薦する工務店にやらせて下さい。そうすれば責任を持ちます」

とは言ったものの、この和室一部屋でも一級作品に仕上げるには、工事費を折半にしても、これまでにもらった設計監理料はほとんど吹っ飛ぶでしょう。しかし私の意地です。建築家のプライドです。

 そこで、私が最も信頼するY工務店に事情を話して、一部屋だけど引き受けてもらいました。

 大工以下最強のチームを編成して工事に入りました。大工は秋田まで材木を買いに行き、宿に帰って削って確認するという熱の入れ方です。

 私も、床の間や狆くぐり、そして違い棚は、村野藤吾を真似して、設計し直しました。村野写しです。勿論ほんものの銘木や漆を使いました。

 完成しました。

救われたのは、それを見て施主は満足そうに喜んでくれたことです。

 約束通り、工事費の半分の代金を払おうとすると、Y工務店の社長は、「いいですよ、先生」と言って私からは受け取ろうとしませんでした。

 若い建築家の諸君。ギリシャ神話に出てくるダイダロスという神様を知ってますか? 建築の神様です。設計には建築の神様を味方につけることです。

 


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