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2019年04月03日(水)

コルビュジェ展

「ある建築家が設計した展示空間で当人が描いた絵画作品を味わう―ー。この展覧会の見どころはそこにある。」というのは、朝日新聞の編集委員大西氏の西洋美術館で行われているコルビュジェ展評の書き出しです。

 私は「ヘー、そうなのか」と首を傾げながらも、学生時代を思い出しました。

 この美術館は私が建築学科に入学した時できました。建築界の巨匠コルビュジェの作品が日本にできた、大戦でフランスにとられていた松方コレクションが帰ってくる、と世間は大騒ぎでした。

 建築界は別の騒ぎで、「こんなひどい建築は子供の遊園地にでもしてしまえ!」と東大の教授が雑誌「建築文化」にも投稿し、酷評でした。たしかにちょうど授業で習っている美術館のイロハをことごとく無視しているのです。採光や、天井が低すぎることや、動線や、観るための引きがないこと、柱が邪魔なこと、などなど。

 美術館計画を教えていた今井兼次先生(長崎26聖人の設計者)は、そのことについて「私見を述べよ」とレポートの課題を出されました。

 私のレポートの要旨は「コルビュジェは松方コレクションの絵画に興味がなく、そんな作品を展示する美術スペースなどどうでもよかったのではないか。それより、まあ、絵は架かっているが、動き回ってなにか良いものを感じる、空間自体に重きを置いたのではないか」というものでした。

 空間は面白いですよ、絵を見なければ。1階の大ホールからスロープで上って、低い天井や高い天井や、狭いとこ広いとこ、丸い柱が突然並んでいたり、同じところをまた通ったり。おまけに、上がってはいけないという、片側にしか手摺がない細い急な階段があったり、楽しめます。

 ああそうそう、コルの絵を見に来たんだっけと同じような抽象画が並んでいるのを横目で見ながら、それにしても面白くないなという中に、オヤッと目を引く絵があって、良く見るとピカソだった。「この展覧会って、何なんだ?」

 コルビュジェが知ったら「ノンノン! 俺の展覧会なんかこの美術館でやるんじゃないよ」と苦笑することでしょう。

 ついでに、コルが5大ポイントにしている屋上にも上がらせないし、ピロティも減らしてガラス張りにしているし、最大の特徴=無限に延びる渦巻きのシステムの片りんも感じないしやってもいないし、これほんとに世界遺産で良いの?


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