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2019年09月30日(月)

停滞の時代の芥川賞

 夜中に目が覚めると、小説を読みます。大抵はまたすぐ眠くなりますが、今読んでいる小説は、イライラしてかえって眠れません。私にはつまらないからです。

 私にとって魅力も関心も湧かないちょっと変な女性の、どうでもいい「作業日誌」が延々と続くのです。あまりにつまらないので、少し飛ばして、終わりの方を読み始めて、少し頁をめくったら、次の記事が出てきて、アレッ、今の小説はもう終わったのか・・・終わりも盛り上がらず、変化もない日常のままで終わるんです。

 小説の名は「むらさきのスカートの女」です。今年の「芥川賞作品」です。選者の評はすこぶる良い。技術的にも高いらしい。

 職探しからはじまって、ホテルの客室清掃の仕事に就く。みんなすぐ辞める職場だから、簡単に就職できました。そして延々と「作業日誌」が始まるのです。

 そういえばこの前読んだ、やっぱり芥川賞作品「コンビニ人間」、これも大半はコンビニの中だけの「作業日誌」でした。

 両方とも、主人公の女は少し変わってはいますが、まったく喜々とした生き方を感じないし、していないし、明日への高まりや夢もなく、特に問題意識もなさそうで、同じような毎日を繰り返す・・・

 正に「停滞の世相」を反映しているのだなあと思ったら・・・ん? そういえば建築も…「新国立競技場」なんてこの小説に似ているなあ、と思います。

 外を回って見ても、同じ柱が並ぶだけ。走れども走れども同じ柱が見えるだけ。変化のない「作業日誌」を読まされているようなものだと思いました。

 建築と文学、関係があるんです。この前のオリンピックの世紀の傑作「代々木総合体育館」、丹下健三が設計始めた、その数年前「太陽の季節」が芥川賞をとったんです。


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