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2020年05月01日(金)

土門拳美術館

 酒田の土門拳美術館について書きます。

前回のシャッターチャンスの話、すみません、読み返してみて、「何を言っているのか分かりません」つくづく下手だなあと恥ずかしくなりますが、今更消すのもなんだから、置いておきますが、見逃してください。

 さて「土門拳美術館」。

 谷口吉生氏の初期の作品です。私は昔、完成して間もなく酒田に見に行きました。

 彼の、初めて雑誌で見た作品は「GA HOUSES」の創刊号だったと思いますが、住宅でした。

 外装全面が150ミリ角のタイルですが、よく見るとどこにも正方形のタイルの半端がない。見事に割り込まれて形が決まっているのです。

 建築家なら分かると思いますが、凹凸のある中庭も、外装すべてに半端を出さずに寸法を決めて割り込んでいくことが、どんなに大変で難しいことか。

 そのかわりその結果はたいへん几帳面で品の良い建築になります。

 しかし、私は、外装にタイルを貼ることや、半端を作らないでキレイにつくる建築は、私にとっては「二番手」の作品で、求める建築と少しズレるのです。

 キレイに作るだけなら竹中工務店を辞めることはなかった。(だから「GA」の創刊号にあの住宅が載ったことは意外でさえありました。(短い中では言えないので、これだけにして))

 「土門拳美術館」に行った話です。

 実にキレイなのです。ディテールがきちっと収まっていて、プロポーションも実に決まっている。この建築は何だろうといろいろ考えました。GAに出ていたタイル張りの住宅と同じか?

 結論は「竹中工務店の設計部でもできる」でした。

 ところが去年、久しぶりに金沢に行って、谷口吉生氏に対する見方が変わりました。

 少し予定が狂って、時間が無くなったので駅前の日航ホテルからタクシーを「鈴木大拙記念館」に飛ばしました。これは谷口吉生氏の近年の作品です。閉館が5時で入場は4時半まで。雨が降っていました。あと数分しかないというのに、金沢の交差点の信号は赤が長いのです。

 受付に着いたのは4時29分でした。

 「あと30分ですよ」

 「はい、かまいません」

 かえってそれが良かった。客は外人の同性愛の男性二人のみ。

 中庭は雨の音だけ。鈴木大拙の本は実は読んだこともないし、思想も知らない。

 だけど谷口吉生氏の空間には神秘的とさえ言える空気が見えるのです。煙や埃の空気なら見えるけど、澄んだ空気が見えるとは、キザなことを言うんではないと言われそうですが、見えるんですよ。

 よく「華がある女性」とか「カリスマ性を感じる」とか言うでしょう。あれ見えますか?華やカリスマって見えますか?

 そういう気配は「土門拳美術館」には無かったんじゃあないか・・・?

 見えないものを見たい方は、是非金沢の「鈴木大拙記念館」に行かれることを勧めます。但し、雨の日、4時半に入ること。

 


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