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2020年05月22日(金)

若い建築家にも金が無い

 数日前の「若い建築家たち、大丈夫ですか?」 というコラム、削除しました。普段から貧乏な建築家、今この時期大丈夫だろうかと心配で書いたのですが、しかし、政治家や高級官僚の あまりに卑怯で、人としての尊厳の無さを見て、気が変わりました。

 読み返して、これでは建築家の1分(いちぶん)を傷つける、と気が付きました。

 建築家はいくら貧乏でも、いくら金が欲しくても、金のためには「建築家の一分」は捨てない。

 今、コルビュジジエの本を書いていて、こういうシーンがあります。

 「国際連盟」の建築のコンペをやって、作品を出し終わったあと、コルビュジエはスタッフをねぎらうために彼の車とタクシーでパリのカテドラルを見学に行きます。総勢7人です。

 そしてレストランに入って、所員の労をねぎらって挨拶のスピーチをします。

 それはカテドラルの建築の崇高さを説き、若い建築家の前途を讃える感動的な話だったと、若いアルフレッド・ロートは回想しています。そして最後に言ったそうです。

 「ところで、残念な話をしなければなりません。それは皆さんに払うべきお金がまったく無くなったということです」

「・・・・」

 実はこの話、昔、妹島和世さんにお話ししたら、「私も…」と言って話してくださったのが「建築家への道」(TOTO出版)に出ています。

「(お金が無いから)事務所の解散を決意して解散旅行をしたことがあります。ところが行く直前になって仕事が入って、結局旅行から帰ってきて気分一新で始めました。そういうことが2度くらいあったかな」

 もう一人、貧乏のことというと、どうしても田中元子さんが頭に浮かぶのです。(失礼お許しください)

 あの方は建築の学校の出身ではありません。なんと医学部でした。しかも病院長のご令嬢。

 しかし建築に道を変えようと家を出る。当然親からは勘当。金が無くなる。

「電気もガスも止められたけど、水道だけは死ぬから水道局は止めないんですよ」とカラカラ笑われる。

 その後「職業欄」には何と書いていたのだろうと思うようなことをされて、数年前に御著書を出版されました。なんと屋台を引いて街を作ろうとしていらっしゃる。

「マイパブリックとグランドレベル」(晶文社刊)

 槇文彦氏の代官山とは真反対のはずですが、彼女が引く屋台は代官山の街にも似合っちゃう。槙氏に屋台は引けないけれど。

 「貴女の貧乏にはユーモアがある」と, 本をいただいた時、感想を書いた気がします。

 若い建築家の皆さん。貧乏はあなただけではない!!


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