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2020年08月09日(日)

二つの都市の「反対意思表明」

最近,、思い出のある二つの都市が、記事になっていました。

 一つは「ザルツブルグ」と、もう一つはアメリカの「ポートランド」です。

 ザルツブルグは、今年が「ザルツブルグ音楽祭」の創設百周年記念とか。

 昔「ザルツブルグ音楽祭」に行きました。ホテルを会場のすぐ横にとったので、出かける支度を終えて窓から下を見ていると、着飾った客たちが歩いて集まって来ます。頃合いを見て、ホテルを出ました。

 ホールの前の路上に、真っ白いクロスのかかったテーブルが出してあって、シャンパンが飲めるのです。独特な雰囲気です。

 日本人もチラホラ見かけましたが、磯崎さんが浅田孝さんと来ていました。磯崎さんは長身だからミヤケの黒いスーツに白い長いストールが似合って、サマになっていました。ちなみにドレスコードが決まっていてカジュアルな服装では恥をかきます。

 ヨーロッパ旅行に合わせてこの「音楽祭」に寄ったので、演目は選べず、特に私は始まるまでどんなものが演じられるのか知りませんでした。

 始まってみると、なんと現代音楽というか、モダンバレエと組み合わされた、異様な「オペラ(演劇)」でした。私はモーツアルトの交響曲でも聴けるのかと思っていました。

 すると、舞台の異様な展開に合わせて、観客からブーイングが起こるのです。度肝を抜かれました。音楽やバレエは静かに鑑賞するものという、私の常識からすると考えられない事態です。

 隣の席の老婦人はさんざんブーイングをした後、とうとう席を立って帰ってしまいました。

 要するに舞台で行われている芸術が、観客によって否定されたのでした。

 翌日のザルツブルグは昨夜の「事件」がウソのような穏やかな平和な観光都市でした。

 さて「ポートランド」

 一人でアメリカに行ったとき、ロスから、ポートランド経由の切符をとって、2時間くらいの乗り継ぎ時間を利用して、ポートランドの空港からTAXIで市内の「ポートランドビル」を見に行きました。

 1980年頃はポストモダンの真っ盛りで、中でもマイケル・グレイブスは人気でした。

 「ポートランドビル」は彼が設計したオレゴン州の市役所の別棟です。

 装飾を「悪」とした近代建築に、ふたたび象徴的な飾りを施してビルを飾る、という典型的なポストモダン建築です。一目実際のビルを見ておきたかったのです。

 黒人のタクシードライバーにワケを話して、またすぐ空港に戻りたいから写真を撮る間、待っていてくれと頼みました。

 「OK!ノンプロブレム」と言いました。

 私は貴重品の入ったカバンを肩にかけ、荷物を残さず、カメラを持って歩き回りました。

 一辺が2,30メートルのビルですから、向こう側に回ると私の姿は消えます。

 急いで写真を撮りまくり、20分くらいしてタクシーに戻りました。

 彼は私をまったく怪しまずに、のんびりと待っていてくれました。

 「日本から見に来たのかね。こういうビルは日本に無いのかね。我々の誇りだ」と言いました。

 私の英語ではポストモダンの説明まではできないので、「これは有名なんだよ。ポートランドは良い街だ」と言ってごまかしました。

 その街が、いやそのビルの周辺が、「黒人の命も大切だ!」と叫ぶデモ隊に、トランプ政権が派遣した迷彩服の武装部隊に「攻撃」されています。

 あのドライバーは元気だろうか・・・?


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