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2020年11月26日(木)

建築の「設計者」とは誰のことか?

予算委員会を見ていると、ほとんどの大臣は、答弁の時、後ろからメモを渡されたり、即席のレクチャーを受けています。あきれてものが言えません。

 菅総理は、「1年にわたって虚偽の発言をくり返したことを安倍さんに確認しないのですか?そしてご自分は反省しないのですか?」という野党の質問にも、再三後ろの秘書官から答弁を教えてもらっているようでした。

 込み入った数字の資料とか、複雑な日時ならメモを見て良いけれど、「どう思うか?」まで秘書に教えられて、呆れます。どっちが総理大臣?と聞きたくなります。

 それで思い出します。

 昔、あるスター建築家の事務所に勤めている教え子が相談に来ました。

 「今度、雑誌に出る作品は、僕がやった作品です。私のアイデアや、私の案をボスが採用してできたものです」

 「それは凄いね、雑誌が出たら是非見たいね」

 「ところが、うちのボスは自分の名前だけ出して、僕の名前を出してくれません」

 「そりゃあ、そういう方針なのだろう。ひとによって、スタッフや担当者を出す人もいれば出さないひともいる。いろいろだよ」

 「いや、あれは僕がやったんだから、僕の作品として発表すべきです」

 「いや、それはないよ。事務所にいる以上、作品はボスのものだ」

 答弁のすべてを教えても、秘書は秘書。大臣ではありません。

 いくらアイデアが使われてもスタッフはスタッフ。

 建築と似てる?・・・ ちょっと違うか?・・・

 そういえば、建築の「設計者」とは何か? 誰を正式な設計者というのか? 実は定義が無いのではないか?

 固い話をすれば「建築確認申請」に「設計者」の欄があります。そこに書く人が「設計者」か? 違います。

 あの欄には、たとえば大学教授(職業があるひと)などは書けません。丹下健三氏は東大教授だった時、あの欄は他の人の、事務所登録をしている代表者の名前を書いたはずです。 しかし、世間や建築界ではすべて「設計者」は丹下健三でした。

 そしてもっと面倒なのは、建築は、建築家によって設計の仕方はまちまちです。

 初めから終わりまで、事細かにボスが決めて、スタッフはそれを図面にするだけ、というところもあれば、事務所でコンペをやって1位の案をみんなが進めるとか、それだけで1冊の本ができるくらい、バラバラです。

 しかし、いかなる作り方をしても、「設計者」は事務所のボス(代表者)です。

 考えてみると、面白い問題です。

 ちなみに、文句を言いに来た教え子は、私の言うことをきかずボスに文句を言って、クビになって、その後 消えました。


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