2022年07月23日(土)
ベネチア・ビエンナーレと大西麻貴さん
来年のベネチア・ビエンナーレの日本館のキューレーターが大西麻貴さんに決まったとか。
この前、大学院生に「今、若い人に一番人気がある建築家って、誰なの?」と聞いたら「うーん、大西麻貴さんですかね」と即座に答えました。そして「ボクは藤原徹平さんですが」と言いました。
大西さんは、そこまで行ったか・・・と、感心しました。
実は、10年くらい前に一度お会いしたのです。「建築学生住宅コンペ」を私が企画責任者をつとめていたころ、青木淳さんに「大西麻貴」が良いと薦められて、審査委員をお願いしたのです。
その当時、彼女の作品は一つだけですが知っていました。渦巻いて上がっていく住宅で、「雨漏り住宅館」だなと、度胸の良さに感心したのを憶えています。
審査の日、真っ白いワンピースを着ていらっしゃいました。
妹島さんとはじめてお目にかかった時は、着ているものと大きなひまわりのブローチを見て、度肝を抜かれましたが、大西さんは、案外普通のお嬢さんで、作る建築とは違うなと思いました。
ところが、話を聞いていると、だんだんやっぱり度肝を抜かれそうで、そんなに肝は無いからこれ以上抜かれると大丈夫かなと思うくらい、やっぱり普通の方ではありませんでした。
「事務所はどこでやっていらっしゃるんですか?」
「八百屋さんの後を借りてやってます」
「店で?・・・道路の方は?」
「あけっぱなしだから、寒くて・・・夏は埃も困ります。だけど近所の方が気軽に入っていらっしゃるから、そういうとこ好きなんです」
こりゃあタダもんじゃあないなと、不安になりました。
その時のコンペの課題は「大きい敷地に住む老人の家」という題でした。
大西さんが押した案は、家の他の残りの敷地を全部洗濯物の干し場にする。そこに近所のひともみんなで干しに来る、というものでした。もう議論はしませんでした。
こんどのビエンナーレは、吉阪隆正先生のあの「日本館」を半透明の布ですっぽり覆ってしまうようです。ピロティにはバーをつくって、人々の対話を促すですって。
そして更に驚いたのは、大西さんをこのビエンナーレのキューレーターの指名コンペで1等(採用)にしたのは、三宅理一さんですって。あの方、お歳は私とそんなに変わらないはず・・・もう抜かれる肝はありませんよ!